研究概要 |
本年度は,次のテーマについて研究を進めた. 1.ストリーム・セグリゲーション(音脈分凝)の観点から見た純音のピッチ知覚 セグリゲーション技術の開発のための基礎研究として,多重奏の状況を想定したピッチ知覚に関する実験を行った.一つは,合奏時の各奏者間の立ち上がりのバラツキ程度の時間差をもって呈示される2つの純音のピッチ知覚を音脈分凝の観点から検討し,ピッチ知覚が時間差の影響を受けることを明らかにした.この成果は研究会に発表し,論文誌に投稿し,採録決定になっている.さらに,このピッチ知覚の弁別力を表す指標を提案し,その有効性を確認して,研究会で発表した. 2.和声学におけるバス課題回答のソプラノラインに関する評価 バス課題は和声学の基礎であり,その課題に対する全許容解を網羅するBasse Donnee System(BDS)を開発し,研究会・国際会議に発表後,論文誌に投稿し,採録決定になっている.さらに,多数の許容解に対する音楽的な評価基準を和音進行ならびにソプラノラインに関する条件から導き,研究会に発表した. 3.時間差に基づいた複数音源の同時方向定位 多重奏を聞いて各楽器の方向定位をするのも音脈分凝の一種である.通常のステレオは各楽器の定位感をスピーカ間のレベル差によって実現しているが,ここでは時間差による実現の可能性について検討し,国際会議で発表した 昨年度末に本研究の本流といえる多重音の分離に関する研究会発表を行ったが,その研究はそこで一旦中断している.これは,その研究過程で人間の知覚に関する基礎研究の必要性が感じられたからである.このため,本年度は音脈分凝技術そのものは扱わず,その周辺テーマの検討に重点を置いた.
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