本研究の目的は、様々なソフトウェア開発プロジェクトを擬似体験することのできるシミュレーションシステムを構築し、シミュレーションによるプロジェクト管理支援技術を確立することにある。本年度に得られた主な成果は次のとおりである。 1.シミュレーションシステムの支援機能の設計、実装…システムの具体的な3つの支援「プロジェクト計画の立案、実行支援」、「新しい開発手法や技術の検証支援」、「プロジェクト経験の共有支援」を実現するための機能を設計し、平成10年度に実現したシステムに追加する形式で実装を行った。特に、ユーザインタフェースにはWeb Browserを採用し、利用者(プロジェクト管理者)のコンピュータ環境を選ばず、ネットワークを介しての利用も可能なシステムとした。また、作業実施に要求される知識構造を認知マップで表現することにより、開発者の持つ知識の違いをより詳細に表現する機能を実現した。 2.支援機能の実験的評価…1.で実現した支援機能の有効性や妥当性を実験的に評価した。ソフトウェア開発プロジェクトとして典型的な特徴を持つ仮想プロジェクト(バーチャルプロジェクト)を設定し、6名の熟練管理者それぞれに主観的な見積もりとシステムを用いた見積もりを行ってもらった。その結果、開発期間の見積もりにおいては、主観的な見積もり値とシステムを用いた見積もり値の間に差の無いことが、有意水準5%で確かめられた。
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