研究概要 |
【本年度の主たる成果】 1. 再現性が困難な実車実験に代えて,ヘッドアップディスプレイ(HUD)評価を光学暗室内行う実験装置を組み上げた.コンピュータにより運転条件を模擬して,前景視対象に相当する遠方像(実像)とハーフミラにより呈示された表示像(虚像)とを,短時間呈示させた.本装置は表示像俯角や距離,輝度などを変化させることができる. 2. 実験装置を用いて,虚像と実像までの視距離差,被験者の俯角移動量,各視標のパターン等を変化させ評価した結果,誤認識の発生メカニズムは輻輳応答遅れに起因することが分かった. 3. 眼球運動計測の実験データとしては,俯角移動量によって生じる共同運動応答と視距離差によって生じる輻輳応答とに深い関連があることが分かった. 4. 現実の自動車では,HUDの微小俯角設定による意図的共同運動は,ドライバの誤認識低減に極めて効果的であることが分かった. 5. 以上の知見を中心に電子情報通信学会誌論文誌等に一部投稿した. 【今後の予定】次年度以降は,これらの知見を基に,遠方像と表示像との三次元的な視標配置での経時的過程の視覚情報処理過程を実験的に調べる.具体的には,視線移動(跳躍的眼球運動)と輻輳応答,視標認識に焦点をあて,輻輳応答経時過程(トランジエントプロセス)での認識,視線移動量や速度と認識度合い,複数視標にいる逐次的情報受容過程,視覚情報の抑制の有無,サッケード抑制成分の有無と関連などを実験と計算機シミュレーションにより詰める.さらに,これらの実験結果に基づき視覚情報処理モデルと,輻輳や跳躍的眼球運動に関連した眼球運動制御モデルを構築する.
|