研究概要 |
準凹関数である線形乗法関数を目的関数に持つ数理計画問題 @su に対して理論と算法の研究を行った. この問題はNP-困難であることが証明されており,目的関数のランクpが大きい場合に正確な最適解を求めることは非常に困難である.申請者は,これまでに提案された近似算法の中で注目すべきBenson-Bogerの算法に対して2つの改良のアイデアを試みた.彼らの方法は問題の最適解がある多目的計画問題のパレート最適端点解であることを利用しているが,パレート最適な端点の個数は変数の個数,制約の本数の増加に伴って増加するのみならず,ランクpの増加に伴って著しく増加する.これが問題を難しくしている一因である.申請者のアイデアの第一は,探索の初期点となるパレート最適端点の探索方法の改良であり,アイデアの第二はパレート最適なフィエスの構成方法である.この2つのアイデアがどの程度算法の改良に貢献し,どの程度の規模の問題を解くことができるかを計算実験をによって確かめ,得られた解の精度を比率 @su で評価した.ここでz_<max>,z_<min>はそれぞれ,パレート最適端点のなかで最大と最小の目的関数値であり,zは提案した算法の与える解の目的関数値である.従って,この値は常に1以下であり,また1に近いほど近似解として優れていることになる.その結果,この値はほとんどの問題に対して0.95を越えており,前出のBenson-Bogerの算法に勝っていた.これは申請者の方法が彼らの算法に比べてより多様なフェイスを作り出すことによるものと考えられる.
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