研究概要 |
本年度は、これまで研究代表者が開発してきた閉鎖性水域や沿岸域における赤潮の発生から衰退までの現象を例題として取り上げて、流域における人間の経済活動と水域での生物個体群活動から成る経済・生態系のモデル(多くの異なった個体と個体群の相互作用のモデル)を構成し、高性能計算機(ワークステーション)によって、海洋の有機汚濁物質(COD)、栄養塩(窒素、リン)、赤潮プランクトン(鞭毛藻類)、珪藻プランクトン、溶存酸素量等の分布が、海域においてどのように自己組織的に形成していくのか、数値実験を行える環境を構築した。 このような経済・生態系の数値シミュレーションでは、多くの変数とパラメータを含むために、モデル構造の変数選択やパラメータの感度解析、生物の適応(遺伝子の組み合わせの選択等)を効率良くかつ適切に行えるような数値実験の仕組みが必要となる。そのために、高速ワークステ-ションによる数値実験結果の図形処理、結果の解釈等が容易に行えるような計算機インターフェイスが必要になる。本年度は、日本海全域を取り上げて,その沿岸域で発生している赤潮現象、中層水や深層水における溶存酸素の減少傾向等を分析する生態系モデルを構築した。そこでは、個別プランクトンの競合と捕食関係、汚濁物質と栄養塩、溶存酸素量の移流と拡散による分布を、日本海の全海域で数値計算できるように、既存の3次元流体モデルを改良して、沿岸域における汚濁物質の流入の経済モデルと結合を図った。
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