研究概要 |
本研究は,研究開発計画,管理論の構築を目指す研究の一環として,特に,「革新的研究開発の構想立案機構」に着目し,その解明と効果的な機構の構成の提案を試み,この分野における研究法確立に一歩を踏み出すことを目的に研究を進め,次の成果を得た. まず第一に、我が国の技術系企業におけて成功した最近の92の研究開発プロジェクトを分析した。その結果、我が国において革新的研究開発を行うには、研究開発の実施機能と分離した「構想立案型人材(コンセプトクリエーター)」の確立が鍵になることを明らかにした.この構想立案型人材は事業戦略と整合する研究開発目標を創設し構想を練り上げる機能を実施し、さらに、研究開発プロジェクトの実現に対して常にそのプロジェクトの意義を理解させるリーダーシップを発揮することが重要となる。 次いで第二として、アイデアの提案者が自分の初期のアイデアを社内に公開し,そこに他の多くの人々のコメントを加えて元のアイデアの質を高めるという仕組(「アイデア発展の場」)を提案した。この仕組みでは,報酬によってコメントの提供が増え,アイデアの質を発展させることができることを示した。さらに,この「アイデア発展の場」において,コメント報酬制度がアイデアの発展に及ぼす影響を定量的に議論するため,「アイデア発展の場」のモデルに基づいてコンピュータ・シミュレーションを行った。その結果,「アイデア発展の場」にコメントの報酬制度を導入することは,質の高いアイデアの数を増加させることが明らかになり,さらにコメント報酬制度の効果について,新たな知見を得ることができた。
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