研究概要 |
今年度は、危機管理システムの中の災害対策システムに焦点を絞り、同一組織内での緊急時の情報収集方法及び意思決定方法の検討をした。初めに現状把握のため、東京都、調布市や大阪などいくつかの都市における広域災害発生時の緊急対策方法・地域防災計画の情報を収集、面接調査をした。 中でも行政及び消防関係組織内での緊急時の情報獲得・情報発信・受信過程に着目し、考察した。これまで大規模災害時に情報が適切に伝達されなかった理由を整理し、新しいタイプの情報収集方法を念頭に情報伝達が成り立つための必要要件を特定、理想的な基本系として「情報伝達サイクル」を構築した。 さらに、階層型意思決定モデルの中にそのサイクルを当てはめ、既存研究の内部モデルと結びつけて、意思決定階層間での情報伝達や情報共有のための基本モデルを構築できた。それは、システムの失敗防止方法論(Fortune,1995)の中でのシステムの欠陥を浮き彫りにするために利用する形式システムモデルとなり得ることがわかり、新しい方法論の提案につながるとの感触を得た(来年度発表予定)。 また、不確実な情報のもとでの意思決定方法も検討した。安全監視システムの設計論で既に得られた結果を応用し、情報欠落状況での意思決定方法を考察、その妥当性をコンピュータ・シミュレーションにより評価中である。 これらの結果は一部学会誌に掲載され、さらに組織リスクの先駆的研究者である英国Manchester大学Reason教授と上記Fortune博士のレヴューも受ける予定である。ただし、短期動向調査研究旅費(文部省)により渡英の機会(99年2月〜4月)を得たため、本研究課題での海外旅費はモバイルパソコン購入に当てた。来年度は、今年度の結果を基に複数組織間での情報システムへとモデルを拡張する予定である。
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