本研究では、多段階生産在庫システムに対する生産指示方式について、需要の非定常な変化に的確に対応する際、事前情報などを必要としない、進化型臨機応変生産指示方式の開発とその有効性の検討を行うため、次のように研究を進めてきた。 1. 対象とする生産システムの検討 平均ばかりでなく、分散も時間とともに変化する非定常な現象のモデル化について、時系列解析、統計解析、シミュレーションの関係書などの文献調査から検討した。また、ニューラルネットワークの関係書などの文献調査から、そのような需要の非定常な変化に対する学習機能について検討した。 2. 生産指示モデルおよび検知・調整機能の開発 続いて、需要の非定常な変化の検知機能と、それに対する生産指示方式の切替えや、パラメータ変更を組み込んだ調整機能を開発した。事前情報と事前の対応の検討という両方の仮定とも緩和する前段階として、今までの研究において事前情報として与えていた、需要の分散を未知の変数として、それに対する検知・調整機能を開発した。 3. 需要の平均と分散の変化に対する検知・調整機能の効果分析 開発したシミュレーションプログラムを用いて実験を行い、需要の平均と分散の非定常な変化に対する検知・調整機能の効果を分析した。その際に、生産システムの特性としては、需要の待ち時間、および工程間の在庫量などについて検討した。 以上の結果、開発した適応型かんばん方式と適応型コンカレント型指示方式のいずれも、事前情報なしに需要の非定常変動に対応できること、ならびに両者の中では適応型かんばん方式の方が平均総在庫量を小さく抑えることができ、より有効であることを明らかにした。
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