研究概要 |
日本の企業の退職給付に関する会計基準は,大幅に改正され今年度の決算(平成12年3月期以降発表)報告から適用される.それにともない,多くの企業が新たな選択行動をおこなうと予測される.本研究では,今年度は昨年度に引き続き,改正に先立つデータ収集とともに,理論と実証の両面から退職金年金(退職給付)政策をともなう企業行動とその影響に関する実証準備をおこなった. 実証面では,まず,昨年度までに収集した企業の「資金収支の状況」データを分析することにより,企業の退職給付政策の違いがもたらすキャシュフロー上への影響を検討した.これは,近年とくに重要性が指摘されている,企業評価におけるキャッシュフロー分析の考え方くをより精緻にするものである.さらに,企業の退職給付政策が全体として費用と支出の乖離を小さくする方向へ変化していることを認識し,その結果として,設備が収益の稼得に貢献する度合いにしたがって,その設備投資の減価償却をおこなう場合の,減価償却方法の選択モデルを国際会議で発表した.このモデルは,国際会計基準を導入する際のひとつの考え方を提案するものである. こうした結果をふまえて,今年度は引き続き,日本の上場および店頭公開企業の会計手続およびキャッシュフローを中心に企業行動に関するデータを収集し,独自ノデータベースの充実を図った.
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