研究概要 |
日本の企業の退職給付に関する会計基準は,大幅に改正され今年度の決算報告から適用される.それにともない,一部の企業は前年度から新たな会計手続の選択行動をおこない,また,他の企業は今年度中に改正に対する会計手続の選択および処理方法が意思決定され発表される.本研究では,今年度は昨年度に引き続き,改正に伴うデータ収集とともに,理論と実証の両面から退職金年金(退職給付)政策をともなう企業行動とその影響に関する実証準備をおこなった. 今年度はとくに,日本の国内証券市場で資本調達を行っている全ての企業(銀行証券保険業を除く)に実施したアンケートにおいて,退職給付債務測定の会計基準の変更新設がどの程度、企業の経営方法・方針に変化を及ぼすか、またその内容についての調査をおこなった.この調査から会計手続の選択のみならず,退職金制度,さらに人事制度の見直しにつながる影響が読み取れたことにより,影響に関する収集データの範囲を広げることとした. これらにもとづき平成12年度上期までに退職給付積立債務不足の処理をおこなった,あるいは処理方法を決定した企業の行動を分析した結果,人件費キャッシュフロー支出の分析の必要性が認められた. こうした結果をふまえて,今年度は引き続き,日本の上場および店頭公開,さらに新設のナスダック・ジャパンおよび東京マザーズ企業の会計手続およびキャッシュフローを中心に企業行動に関するデータを収集し,独自のデータベースの充実を図った.
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