本研究では、デミング賞受賞企業・職場を対象に、当該企業・職場におけるヒューマンエラーの発生状況および作業管理システムの実態に関する郵送調査を行い、両者の関係を明らかにすることを試みた。 ヒューマンエラーの発生状況については、「作業管理システムに対する対策を取る」という立場からのエラーの分類を与え、どのようなエラーがどのような割合で発生している調査した。また、作業管理システムの実態については、1)作業を標準化する方法(標準書を作成する基準、作成者、出来上がった標準書の確認方法、標準書の保管・改訂の方法など)、2)作業者を教育・訓練・動機付けする方法(標準書で決められた作業に関する教育・技能訓練・動機付けの方法、職場配置の決め方など)、3)作業をフールプルーフ化する方法(作業負荷や作業環境の評価方法、作業方法に潜むエラーの危険性の予測方法など)の3つについて自由書式により調査した。得られた結果をもとに、ヒューマンエラー発生状況のパターン分類を行うとともに、作業管理システムとヒューマンエラー発生状況の関係について統計的に解析した。 結果として、品質トラブルの中で作業ミスに起因するものの割合が50%以上という職場が半数近くあり、作業ミスが工程管理の重要な課題の一つとなっていること、中でも「標準通り作業していない状況で発生するミス」が多くの職場で問題となっていること、これらのミスを防止するには、作業者の能力評価を行ったり、評価結果に基づく計画的な教育・訓練を実施し、個別の対応を強化することが有効であること、特に「標準を守らない」状況で発生するミスを防止するためには、作業を観察したり、不具合事例を用いて標準の重要性を教え、作業者に対する指導を徹底して行うことが有効であること、などが分かった。
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