研究概要 |
研究目的として、今年度解明に努める3つの問題を挙げたので、順次見ていく。第1の問題は吸収壁を持たない(有限区間の)ランダムウオークに関連した最適停止問題である。最適方程式は導いたが、数理解析が困難で残念ながら現時点では目ぼしい結果を得るには至っていない。第2の問題はBrussのodds theoremを選択の不確実性を含む場合にまで拡張した問題であるが、これに関してはoddsをうまく解釈することによりBrussの結果のanalogyを得ることが出来た。この結果は昨年7月、京都大学数理解析研究所で報告し、最新の考究録に掲載されている。第3の問題は部分リコールが可能な複数採用順位和最小化問題で研究実施計画に記した(2)とも対応している。これは次のような状況を想定した問題である。新年度にm人の採用を予定している企業が1年をk期に分け、各期末にその期の応募者を対象に試験を実施し、上位何名かを採用する。応募者が十分多いとき、毎期均等に(m/k)人採用するのは賢明ではない。なぜならば、i期(i=1,2,...,k)に応募した学生の能力に関しては、その期の応募者の中での順位のみならず、1期からi期までのすべての応募者の中での順位付けが可能となるからである。今年2月京大数研で、研究の一端を報告した。k=3の場合の最適政策の構造は解明できたが、kが4以上の場合はまだ解明できていない。この問題は応用可能性を秘めており、今後、数理解析のみならず計算機による数値計算の効率的アルゴリズムも追及していきたい(研究実施計画に記した(3)に対応)。全体として研究が遅れているように見えるが、これは日本応用数理学会から特集号(最適タイミングの数理(仮称))のオーガナイザーを依頼され、その原稿の執筆に追われたからである、小生のタイトルは「秘書問題の諸相と最近の展開」で、本研究のテーマと一致しており、最近10年のこの分野の研究の進展を纏めた(今年末刊行予定)。
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