狂牛病、病原性大腸菌O157、雪印事件などの表面化した問題、遣伝子組換え食品、保存料・添加物などまだ表面化していない問題を含めると食品の製造・流通過程における安全を揺るがす問題は数多く存在している。一方、あらゆるシステムの基盤となっている情報システムは、新種のコンピュ-タウィルスが現れると瞬く間に全世界を席巻してしまうように、IT先進国ほどより脆弱性を抱えている。このように一旦インフラとなっている技術の弱点が発見されると、ネットワークで結ばれた社会は、簡単に崩壊するリスクを常に秘めている。かといって、日進月歩を遂げている技術の進歩、IT化の流れを止めることはできない。このように効率化一辺倒で突き進んできたIT社会は、さまざまなリスクを内包しながらわれわれの身近なところで既にいくつかの安全を脅かす問題を噴出させている。しかし、現在の社会では、価値観が多様化しているにもかかわらず、世の中の仕組みはそれに対応できていない。すなわち、それらを評価する尺度は従前のままであり、多様化した社会に相応しい評価がなされていない。評価ができない理由は、実際の社会が階層化しているにもかかわらず、社会の運用レベルにおいては層別化、差別化もできない状況が続いているからと考えられる。 本研究では、組織が守らなければならないものは何か、各階層の機能と管理すべきものを明らかにした。従来、その辺りが明確でないとき、システムの各局面において下位の階層の効率を管理するために、上位の階層の効率を犠牲にしたり、あるいはその逆の事態を招くことがあった。本研究の成果は、全体システムとして本来整合性を保つ仕組みがライフサイクルをベースに構築され、本来異なる機能を有する上位の階層と下位の階層を合理的、かつ合目的的に統合する手法を体系化したところにある。
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