本研究の目的は株式や債券等の金融商品への投資に際し、1)経済モデル等の従来のモデルに加え新たに開発した機械学習の方法をサブモジュールとしてもちそれらを統合したモジュラーネットワークを構築することによって売買候補の判定精度を高めること、2)得られた売買候補の中から最終的にどれをどれだけ売買するかという決定をするためにリスクとリターンのトレードオフ分析を含む総合的な観点から意思決定者が柔軟に最適なポートフォリオを組むことができるように多目的決定の技法を用い、その支援システムを構築することである。本年度は、前年度に引き続き、時々刻々変化する環境に対し先を予見しながら的確な売買候補を決定するために機械学習における追加学習と忘却について手法の改善強化を行った。具体的には、これまでのシミュレーションによって最も実用的と考えられているKNN法、ポテンシャル法、RBF法においてとくに最適な忘却のしかたについて重点的に検討した。忘却は何が重要で何が不要かを自動的に判断することと等価で、ポートフォリオ最適化のような状況が変化する意思決定問題では最も重要で困難な課題である。これまでは時間とともにデータの重要性を減衰させるという受動的な忘却しか考えられていなかったが、本研究では不要なデータを積極的に検出し、その重要性を減衰させるという能動忘却について新しい手法を開発した。過去の10年間のデータに対しシミュレーションを行い、その有効性を確かめた。
|