津波時の避難行動に適用した谷口・今村(1998)のモデルを改良し、現地での行動調査結果のデータを基に、経路選択の際に人間の判断を導入した避難行動シミュレーションの開発を行った。このシミュレーション法は、今後の避難計画の策定や街づくりにおける各種公共事業の実施に際し、住民避難行動の観点から検討評価を行うための手法のひとつとして、活用できると期待される。今回の現地調査は、昼間10人・夜間7人の被験者についておこなった。結果については、調査表及びVTRの検証から各項目についての経路選択の要素とその頻度比率を求めた。昼間の調査で、認知度の高い被験者の行動は、標識や地形条件にあまり左右されること無く目的地に到着していたが、認知度の低い被験者は標識を頼りに行動し、標識が無い状況での経路選択はランダムに経路を選択しるために路に迷うことも見られた。全体的には標識及び認知度の選択比率が高い結果となった。一方、夜間の調査では、情報を得るため交通量が多くかつ明るい主要道路への方向を選択したところ、すでに知っている道だったというような状況(位置情報を入手)を反映し、認知度に続き主要道路の選択比率が高い結果となった。本研究により、時間帯(昼間であるか夜間か)や地理認知度の程度により様々な行動パターンが見られ、これをシミュレーションに取り入れる事が出来た。調査結果やシミュレーション結果を見ると、認知度の低い場合の経路選択行動は、標識に依存する傾向が強いことがわかる。このことから、避難場所についての啓蒙活動はもとより、避難場所へ誘導できるような標識の整備が重要であると思われる。
|