研究概要 |
津波のような大災害時において人的被害を最小限にくい止めるためには,迅速な住民の避難行動が重要であり,その行動特性に応じた地域計画・避難システムが必要である.そこで本研究では沿岸地域の住民に対して,避難訓練調査およびヒアリング調査を行うことにより津波避難に対する意向を把握し,その結果を導入した避難シミュレーションモデルを開発することを目的とした.従来の経路選択判断モデルである総合的判断基準を改良し,個人的な意志や認識を外生的に入力できるモデルへと改良を行った.この改良した避難シミュレーションを,対象地域の仙台市若林区貞山堀より海側の全住民に適用した.まず,道路・交差点,避難場所,橋脚などを表現するネットワークデータを作成した.これは,ノードとリンクで構成され,既存の都市計画図より求めた.ヒアリングが得られた世帯はその結果をそのまま入力することとし,それ以外の世帯はヒアリング調査結果の割合,および区役所からいただいた町名別世帯構成人員別統計のデータより仮定した.目指す避難場所を各世帯によって区別することにより,対象地域から離れた内陸の方への避難者も表現することが出来た.また,道路に住民が集中することにより,交通密度が大幅に増加し,予定していた経路とは異なる周辺の道路へ迂回する世帯が多く観察された.対象地域における交通渋滞の危険性を示すことができ,交通密度を減らす等の何らかの対策が必要であることが示された.
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