本研究は、都市排水の防災用水としての利用について、平常時における親水用水としての多目的利用を考慮して検討し、地域特性に応じた導入の司能性を判断する方法論の形成を目的として、平成10年度と平成11年度の2年に分けて実施すると計画されている。初年度(平成10年度)の目標は都市排水による防災用水の確保可能性の評価方法を構成し、受容確保可能性と必要な対策およびその効果明らかにすることであった。本目標は現在ほぼ達成されている。具体的には、震災時の防災用水の確保対策として事前対策と事後対策、それぞれについてはさらに水道系統における対策と非水道系統における対策(これに都市排水の再利用が含まれる)を検討対象として取り上げ、これらの特性の異なる対策を同一の尺度で評価するため、従来から研究・提案してきた需給安定性に関する確立評価理論をもとに対策の評価手法を構成し、モデル地域における検証を行い、その適用可能性を確認できた。さらに、本評価手法を用いて都市排水による防災用水の確保可能性(効果)を他の対策と比較することにより分析を行った。分析結果から、震災後の水需要確保においては都市排水の利用が需要確保確率を向上させる意味において水道の復旧や防火水槽の設置などの対策と等価であること、地震による水道の被害が大きく、復旧が遅い場合に、特に震災発生直後において都市排水の利用効果がおおきいことなどが分かった。現在は、当初の研究実施計画に沿って震災時における防災用水として確保された都市排水が平常時の親水用水として利用可能であるのか、水質上の課題、経済的実現可能性等について検討を進めており、予定通り平成11年度で当初の目標を達成して研究を終了する見込みである。
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