研究概要 |
プラズマ中のフラーレンイオンに着目し,フラーレンプラズマの制御と堅牢なフラーレン薄膜の形成を目的として,飛行時間法(TOF)を用いたプラズマ中のイオン種測定とフラーレン堆積膜形成実験を行っている.フラーレンプラズマは,直流またはECR放電で生成されたアルゴンプラズマ中にフラーレンを昇華,導入することによって生成される.フラーレン堆積膜の堅牢化には,バイアス電極にフラーレンイオンを加速,捕集する方法を用いている.膜の構成物質と表面解析には,レーザー脱離イオン化型質量分析器,ラマン分光分析器XRD,SEMを用いて調べている.直流プラズマ中において,負バイアスを深くし,強磁場中で形成されたフラーレン膜は,主にC_<60>から構成されていて,レーザー照射による脱離とフラグメンテーションが軽減されている.これは,基板を打撃するAr^+のエネルギーがラーモア効果によって,C_<60>^+の基板入射エネルギーより相対的に減少することが一因であると考えられる.後半は,フラーレン膜の高速成長C_<60>と水素フリーの堅牢な炭素系膜(ダイヤモンド薄膜など)の形成を目指して,それらに最適条件を与えるECR放電を用いたフラーレンプラズマ源を開発している.ECRプラズマ中のTOF測定と堆積膜の質量スペクトルから,C_<60>より低質量の炭素クラスタが多く観測されている.この結果から,ECRプラズマ中では,フラーレンのフラグメンテーションとそれらのイオン化が十分に起きていると考えられる.現在,ラマン分析の結果から,水素フリーで負バイアス基板を加熱することなく,DLC膜を約3μm/hで高速成長できる可能性が見出されつつある.
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