我々は、超流動液体ヘリウム中では、正負イオンの移動度が1万倍以上増大するため、低気圧気体中の放電プラズマに似た希衝突プラズマが発生できると提案して来た。平成8・9年度に科学研究費補助金(c)(2)を受けて、このような極低温プラズマの時間分解分光計測を行い、プラズマ・パラメータの空間平均値を測定した。本研究の目的は、実験をさらに発展させて、このプラズマの空間分解測定を行うことである。 液体ヘリウム中に針電極を対向させ、パルス高電圧を加えて放電させる。その結果、密度1018cm^3、電子温度1万度程度のプラズマを発生させる。前年までに、アフターグロー期間中の発光の時間分解計測を行った。ヘリウム中性線スペクトルのシュタルク幅と線強度比を測定して、プラズマ・パラメータを求めた。 今年度は電子顕微鏡用のタンクステン針電極を使用し、測定に信頼性が増した。まず曲率を変化させて、プラズマ密度、電子温度などのプラズマ・パラメータがどう変わるかを調べた。その結果、同じ電圧に対して曲率が50ミクロンと小さい場合は、100ミクロンと大きい場合に比べて30%放電電流が大きく、また、生成されるプラズマ密度も大きい。また、液体ヘリウム中の放電と常温ヘリウム気体放電のプラズマ密度の減衰を比較したところ、前者では、放電が局在するため生成される密度は大きいが、時間の経過とともに、周辺部液体の冷却効果のために、密度減衰が著しく、常温ヘリウム気体中放電の場合の電子密度よりも速くなくなる。また、従来は電極支持材料として柔らかいテフロン材を使用していたが、硬いFRPに替えたところ、冷却による電極間隙長の変化が減少し測定の信頼性が向上した。最後に、3次元光学ベンチを使用して、分光器に入射する光の焦点位置を1ミリ毎に移動させて、超流動液体ヘリウム中で生成されるプラズマの密度・温度分布を測定した。その結果、生成した極低温プラズマのプラズマ・パラメータの空間分解測定が可能になって来た。現在、実験を継続中であって、さらに、データを蓄積して行きたい。
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