平均入射電力1200Wのマイクロ波パルスバーストを用いて励起した電子サイクロトロン共鳴励起酸素プラズマ中で金属酸化物(タンタル)の微結晶薄膜の堆積を行った。温度制御した溶融石英基盤上に、基盤温度が250℃以下では透明度の高いアモルフォス状の薄膜、450℃以上では基盤表面にC軸が垂直に配向した薄膜結晶を1時間当たり0.7μメートルの堆積速度で形成することが可能であった。差動排気した4重極型質量分析器の電子エネルギーを制御して、出現ポテンシャルモードでの質量分析を行い、プラズマ内部の解離酸素原子の相対密度を測定したのであるが、この測定によってマイクロ波パルスバーストが酸素原子の解離に有効に働いていることと、準安定励起状態の酸素原子が観測された。この実験で得られた重要な知見は、酸素を希釈しマイクロ波放電を安定化させるために作動気体に含まれているアルゴンの相対密度が高い場合に酸素原子の相対密度が減少する傾向を見せるということである。これが、アルゴンの分圧が高い場合は、堆積速度が上昇するものの、薄膜の結晶性が劣る傾向が見られる原因と考えられるため、現在追試を行っている。
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