研究概要 |
レーザートムソン散乱法によるプロセス用プラズマの電子密度・温度測定の有効性が,可視波長域のレーザーを光源としてArガス放電を対象に示されている。しかしながら,実際のプロセスにおいては,多原子分子を動作ガスとしたプラズマ(反応性プラズマ)が用いられる。そのようなプラズマ内の多原子分子,ラジカル,負イオンは可視光の光子エネルギーで容易に解離,電離,電子脱離を受ける可能性がある。それを避けるには,レーザー波長を赤外とし,光子エネルギーをそれらの反応の閾値以下とする必要がある。そのような背景から,本研究は,赤外波長域のトムソン散乱計測システムを開発することを目的とする。 まず,赤外域における波長の選定について検討した。YAGレーザー基本波(1.06μm)を用いれば,従来用いてきた第2高調波と比べてレーザー出力エネルギーが2倍(光子数で4倍)となり,検出器についても最近開発されて市販されるに到っている光電子増倍管により,この波長で1%の量子効率が得られ,可視域と同程度の感度を持つトムソン散乱システムが期待できることがわかった。 次に,実際に波長1.06μmでのトムソン散乱システムを構築し,期待する性能があるかどうかを検討した。アルゴンガスからのレーリー散乱光強度を測定することにより評価した結果,予め見積もった信号強度と実験値が一致し,所期の性能が得られていることがわかった。次に,本システムによる測定結果が妥当なものかどうかをチェックするため,Arプラズマを対象とした測定を行い,第2高調波を光源とした測定結果と比較した。その結果,両者は一致し,可視域と同等の測定が可能であることを示した。さらに,負性ガスであるCF_4を含む反応性プラズマでも測定を行い,測定値が妥当な値であることおよびレーザーによるプラズマ擾乱の兆候は見られないことを確認した。
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