研究概要 |
本研究は,小型船舶やビルの給水タンクなどに使われている比較的大型の建造物を構成しているガラス繊維強化プラスチック(GFRP)廃材の再資源化を,環境調和型プロセスで実現することを最終目的として,GFRPのマトリックス材である熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂)を対象に水蒸気を用いたマイクロ波プラズマによる分解と資源化についてプラズマパラメーターと生成物との関連を調べ,有用な物質への変換に好ましい条件を見いだすことが目的である。本年度は主として小型船舶の船体に利用されている不飽和ポリエステル樹脂を対象に実験を行い,ガス分析計(今年度購入備品)によるマススペクトル分析(MS)と冷却トラップで回収した生成物についてスティームクロマトグラフ(SC)による分析を行った。 MSの測定結果より,試料の分解時のマススペクトルにはH_2Oプラズマのみの場合と比較してm/z=12,39,55,72,78,84,92,99のあたりにそれぞれC^+,C_3H_3^+,C_4H_7^+またはC_3H_3O^+,C_4H_8O^+,C_6H_6^+,C_6H_<12>^+,C_7H_8^+またはC_6H_4O^+,C_7H_<15>^+またはC_6H_<11>O^+に帰属される新たなピークが観察された。また,SCでの分析より生成物のピークが13本確認され,それぞれTrの短い順からメタノール,エタノール,アセトン,2-プロパノール,1-プロパノール,2-プロペン-1-オール,2-メチル-2-プロパノール,2-ブタノール,2-メチル-1-プロパノール,1-ブタノール,3-ペンタノール,2-メチル-1-ブタノール,プロピレングリコールに対応し,炭素数が1から5,分子量32から88までのアルコールを中心とした低分子物質であることがわかった。以上の結果より,不飽和ポリエステル樹脂はプラズマ化学反応によって低分子に分解されることが確認された。
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