プラズマの流速をプローブ法によって測定する場合、磁場に垂直方向の流れは、磁場の効果が無視できないために正しく測定できないと考えられてきた。我々は、磁場中の方向性プローブにたいして、対称性に基づいた議論を展開し、プラズマ流速と方向性プローブのイオン飽和電流を関係付ける一般関係式を導いた。その結果、磁場の効果が強く現れる磁化条件下においても、180度異なる2つのイオン飽和電流の比を取れば、磁場の影響をほぼ完全に相殺できることを示した。また、アルゴン、及びヘリウムで実験を行ない、イオンが磁化条件を満たす場合と満たさない場合の両方で一般関係式が正しいことを確認した。我々がもとめた関係式はシースやプレシースの構造には依存していない。したがって、磁場中の方向性プローブの問題は、従来議論の焦点であったシース、プレシースの構造によって決まるのではなく、系の対称性こそが本質的であると結論できる。即ち、向きを持たない物理系に(プラズマに)、対称性の異なる2つのベクトルB(磁場)、V(流れ)を導入した時、スカラー物理量(プローブ電流)がどのように応答するかという問題と全く同値なのである。 方向性プローブを用いた流れ構造の測定では、周方向回転に逆転構造が存在することがわかった。また、これに対応して軸方向の流れも、中心部でプラズマ生成領域へ向かう逆流が見つかった。中心部において、プラズマ生成領域へ向かう流れの存在は、磁場勾配、圧力勾配などでは説明できない。これは、プラズマの巨視的な流れを駆動する原因が別に存在することを示唆するもので、非常に興味深い。さらに、実験結果を綜合すると、流れの構造は装置全体にわたる対流を構成している可能性が強く、今後より詳細な実験を行っていく必要がある。
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