研究概要 |
プラズマ対向材料としての適合性、特性を調べる目的で、低エネルギーヘリウムイオン照射による損傷の発達過程、特にスエリングの素過程であるバブルの動的挙動を結晶粒内、結晶粒界にわたって電子顕微鏡その場観察により調べた。さらに、STEM-EELSにより、合金元素の照射誘起偏析の様子も調べた。 1.格子間原子型転位ループの核形成について Ni,Fe,Al中の格子間原子型転位ループの核形成がヘリウムや水素によって促進されることが判った。これは、ヘリウムまたは水素と原子空孔が格子間原子の有効な捕獲サイトになるためと考えられることを種々の実験結果と計算機モデル計算により明らかにした。 2.オーステナイト、フェライト鋼、Fe,Al中のヘリウムバブルの動的挙動 (1)いずれの材料においても、バブルかブラウン運動しながら粗大化することを初めて見出した。また、このことからランダムウオーク理論に従ってバブルの拡散係数を求めた。さらに、そのサイズ依存、温度依存、合金依存性が求まった。 (2)粒界に沿ってのバブルの偏析と素早い移動合体の様子が明らかになった。 (3)STEM-EELS分析の結果、オーステナイト鋼では、Crの枯渇とNiの偏析、フェライト鋼では、Crの偏析が明らかになった。これらは、バブルの移動を制御しているものと考えられる。 3.β-SiC、Al_2O_3について SiCやAl_2O_3は耐熱定放射化プラズマ対向材料としての利用が検討されているが、バブルの動的挙動について調べられた例は無かったが、本研究により次の点が明らかになった。ヘリウムバブルは、微小なものでも1100Kくらいまで安定であるが、これ以上では次第に合体をはじめる。一方、結晶粒界では1000K以下でも容易に移動合体が起こる。このことは、、燒結材の利用においては注意すべき点である。 4.米国Argonne国立研究所において、高エネルギーイオン照射下でのバブルの移動挙動を調べ、新しい知見を得た。
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