研究概要 |
ジルコニウム合金ゲッターには、核融合炉燃料サイクルにおけるトリチウムの分離、精製、貯蔵の中心的役割が要求されている。著者はZrやZrNi,ZrCo,ZrV_2等の合金粒子充填層によって充填塔の出口トリチウム分圧を科学技術庁が定める放射性同位元素管理濃度以下まで回収できることを過去に見いだした。しかし、合金はいったん高濃度の酸素、窒素、水蒸気、一酸化炭素のいずれかを含むガスに触れると吸蔵能力の大部分を損なう欠点も判明した。そこで吸蔵メカニズムに関する過去の研究成果を検討し、合金本来の吸蔵性能を保ったまま、不純物の内部侵入を妨ぐため、合金表面にアルカリ処理、無電解Pd被覆処理、無電解Cu被覆処理によって不純物耐性を向上させることをねらい、平成10、11年度にわたる研究を計画した。 初年度では、充填層内のその場で表面処理するための実験装置を製作し、不純物雰囲気における水素と重水素吸蔵性能への表面処理の効果を実験的に求めた。その結果、上の三つの処理法のうち、NaOH表面処理が未処理のZr_2Feの水素吸蔵速度を常温で約10倍も高めることが分かった。反応速度の増強は特に粒子表面における水素解離反応を促進していることが実験値と計算値の比較から分かった。その効果は、少なくとも8回の水素吸蔵脱離サイクルで変化せず、微量の酸素と大量の窒素中に含まれる水素同位体を常温で測定限度の1ppm以下まで回収でき、核融合炉の燃料サイクルにおけるトリチウム回収に有効であることが分かり、この結果をFus.Eng.Des.誌に投稿し掲載された。 次年度では、トリチウムのデータを収集し、合金を表面分析し、得られた成果をトリチウム関連の国際学会で発表する予定である。
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