本年度は重イオンとの同時注入効果の実験に先立ちに各種の耐熱材料にヘリウムイオンを照射し、照射後の組織観察及び超微小押し込み試験機を用いた硬さの測定を行うことにより欠陥形成と強度(硬さ)との関連に関して研究を行った。 高純度のタングステンに対して0.25keV及び8KeVのエネルギーを持っHe^+イオンを室温から1073Kでの温度範囲で照射実験を行ない内部組織を同時観察した結果、8keV照射では低照射領域で格子間型転位ループが形成され、照射温度が高いほどループの密度は低下し、サイズは成長した。また高照射領域ではいずれもヘリウムバブルが観察された。室温照射では照射量が増加しても、バブルのサイズはほとんど変化しないが、873K及び1073K照射では空孔の吸収や、合体等によりバブルのサイズが著しく増加した。一方、0.25keV照射においては、どの温度領域でも低照射領域ではヘリウムの板状析出物と考えられるドット状の欠陥が観察され、さらに照射量が増加するとヘリウムバブルが観察された。この様な組織変化は、硬さ試験による結果にも大きく影響する。例えば、モリブデンでは重水素照射により0.12dpa程度から硬化が始まり0.2dpa程度で一度飽和の傾向を示すが、照射量の増加に連れて更に急激な硬度の上昇が見られ27dpa程度では4倍近くの硬度変化が見られる。来年度は、この様な知見を基に重イオンとの同時注入の効果が組織及び強度に如何に影響するかについて考察し、本研究の総括を行う。
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