研究概要 |
本研究の目的は,プラズマ中の揺動に起因する異常輸送と新古典輸送を統一する輸送理論を構築することである.本年度は,静電ポテンシャルの揺動に対して準線形近似を用いて新古典準線形輸送理論の研究を行った. 1.まずはじめに,新古典論効果を無視し,一様磁場中にあるプラズマに対して,揺動が存在するときの古典輸送理論の研究を行い,その輸送行列を求めた.この輸送行列は,新古典準線形輸送理論のパイオニア的な論文でShaingが求めた輸送行列を再現できる.したがって,新古典輸送のタイトルが付いているこの論文では,新古典論効果は本質的ではなく真の新古典準線形輸送理論でないことが分かった.また,Shaingの研究で重要な役割を演じた分布関数に対する仮定(Shaing'S ansatz)の物理的意味や,輸送行列に対するオンサーガー対称性は一般には成り立たない,などのことが分かった. 2.1の結果を踏まえて,トカマクプラズマに対して,バナナ領域から衝突領域の全ての領域で成り立つ新古典準線形輸送理論を構築し,次のような結論を得た. (1)磁力線方向の流れ(電流など)やWareピンチ項(外部電場による径方向粒子束,熱束)に対するトロイダル効果は衝突周波数が小さくなると重要になる.例えばバナナ領域では,揺動の位相速度と熱速度の比が逆アスペクト比の平方根より小さくなると,上記の流れやピンチ項は著しく低減する. (2)圧力や温度勾配による径方向の粒子束や熱束は,第0近似では一様磁場中の結果で良く近似できる.しかし,これらの径方向束に対するトロイダル効果は,従来の定式化ではその一部の効果のみしか取り込むことができないことが分かり,新しい定式化を提案した. (3)Shaing's ansatzは一様磁場中でのみ成り立ち,トロイダルプラズマに対しては成り立たない.
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