トーラスプラズマの超新古典輸送と大域的輸送の理論研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10680479
• 研究機関: 核融合科学研究所
• 研究代表者: 岡本 正雄 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 教授 (70115541)
• 研究分担者: 菅野 龍太郎 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助手 (30270490) ; 村上 定義 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助手 (40249967) ; 中島 徳嘉 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助教授 (30172315) ; 石崎 龍一 核融合科学研究所, 大型ヘリカル研究部, 助手 (60301727)
• キーワード: 新古典輸送 / シミュレーション / モンテカルロ法 / δf法 / イオン熱拡散係数 / 平行電流 / バナナ幅 / ポテト粒子

研究概要

急峻な圧力勾配や大きなシアー流が存在する時、標準的新古典輸送理論は成り立た無くなり、衝突性輸送に対して有限のバナナ幅を考慮した非局所的取り扱いが必要になる。本研究では、標準的新古典輸送を越えた衝突性輸送(超新古典的輸送)をシミュレーションで明らかにし、また、大域的輸送を様々な方面から解明する事を目的としている。平成11年度は超新古典輸送解明のために、有限バナナ幅、大きな圧力勾配、速いプラズマ回転などを取り入れることのできる衝突性輸送のシミュレーション・コードを開発した。統計性を高めるため、粒子の重みの時間発展も解くδf法を採用している。粒子の重みの付け方には2点重み法を新たに考案した。この結果、本年度は以下の点を明らかにした。(1)バナナ幅が小さい時は同種粒子衝突による粒子束はゼロであることを確認した。(2)磁気軸近傍にはバナナ粒子は無くポテトと呼ばれる粒子トポロジーに起因して、イオンの熱拡散係数が磁気軸近傍で大幅に減少する。(3)同じ理由で、磁場に平行なプラズマ流は磁気軸近傍で大幅に減少する。(4)密度勾配を大きくするに従って(相対的にバナナ幅が増大)、同種粒子衝突による粒子束が有限の値を持ちその大きさはバナナ幅の増大に比例する。(5)十分大きなバナナ幅(十分大きな密度勾配)に対して同種粒子束は有意な値を持つ。(1)は従来の標準的新古典論の結果の再現であり、(2)と(3)の結果は、シミュレーションで初めて定量的に明らかにしたものである。(4)と(5)は大きな密度勾配のある場合で、新しい結果である。現在、モンテカルロ法の技法として重要な分散低減法に取り組み、統計性を向上させるためのアルゴリズムを開発している。また、径電場の効果を取り入れられるようにプログラムを改良している。ECH加熱時や磁気島存在下での大域的輸送の研究も発展させた。

研究成果

• [文献書誌] W. Wang, N. Nakajima, M. Okamoto, S. Murakami: "A new δf method for neoclassical studies"Plasma Phys, Control. Fusion. 41. 1091-1108 (1999)
• [文献書誌] S. Murakami, et al.: "5D Simulation Study of Suprathermal Election Transport in Non-Axisymmetric Plasmas"Fusion Energy (17th IAEA Conference). 4. 1383-1390 (1998)
• [文献書誌] R. Kanno, N. Nakajima, T. Hayashi, M. Okamoto: "Computational Study of three-dimensional equilibria with the bootstrap current"J. Plasma Phys.. 61, 2. 213-220 (1999)
• [文献書誌] M. Okamoto, et al.: "Physics issues in the LHD plasma"Plasma Phys. Control. Fusion. 41. A267-A272 (1999)
• [文献書誌] R. Kanno, N. Nakajima, M. Okamoto: "Election heat transport in a self-similar Structure with magnetic islands"J Phys. Soc. Jpn.. 68, 3. 844-847 (1999)
• [文献書誌] M. Okamoto, N.akajima, W. Wang: "On the two Weighting Shema for δf collisional transport simulation"Res Report of National Institute for Fusion Science. NIFS-60. (1999)