中性子捕捉療法は腫瘍に選択的に^<10>Bを集積させ、中性子を照射し、発生する核分裂エネルギーで腫瘍を破壊しようとする治療法である。悪性黒色腫に選択的に^<10>Bを集積させるp-ボロノフェニルアラニン(以下BPA)を用いて中性子捕捉療法が行われ、成果をあげているが、さらなる効果のために^<10>B集積量の増加が期待されている。そのためには集積メカニズムを解明し、それに基づいて腫瘍集積性化合物を合成することが重要である。本研究の目的は、^<11>B-NMRを用いて、BPAをはじめとする様々な腫瘍集積性ホウ素化合物の生体内での化学的挙動を調べ、その集積機構を解明し、かつ、坦癌動物による致死効果の研究により有効性を検討し、さらに集積性の高い化合物を開発することである。生体腫瘍組織の^<11>B-NMR測定は現有するJEOL LA400NBを用いて行った。組織中の^<11>B濃度が少ないため、数百万回の積算を行う必要があるが、得られたスペクトルはベースラインが大変大きく歪んだ。その原因のひとつとしてはプローブ中に含まれている可能性のあるホウ素に起因することが考えられたが、本年度の実験では特定できるまでにはいたらなかった。しかし、BPA中のホウ素濃度が数ppmの希薄水溶液まで^<11>B一NMRで測定できることが判明し、生体投与サンプル中のBPAの動態研究が可能であることがあきらかとなった。さらにBPAとチロシンのジペプチドの合成に成功した。本化合物の腫瘍集積性の確認までは行えなかった。次年度はその確認をすることを行い、かつ^<11>B-NMRを用いて腫瘍関連物質とこのジペプチドの間の相互作用について調べ、集積メカニズムを探る予定である。
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