研究概要 |
3年間の研究期間を通じて、最新の磁場計測技術による渦電流探法に関する現状の調査および分類をおこない、知的学習機能を有する非破壊評価法の確立をめざして研究を遂行し、下記に示す成果を得た。 (1)簡略化ファジイ推論を用いたき裂深さ推定に関する計算手法 有限要素境界要素併用法による渦電流探傷の解析モデルをもとに各種欠陥形状に対するコイルインピーダンス変化のデータベースを作成し,このデータを学習にもちいて,き裂深さの推定をおこなう計算手法を示した。提案した手法は,学習に要する時間も少なく,あらかじめデータベースを構築しておけば,短時間でき裂形状の推論が可能となる。この方法の有効性は実データを用いて検証した。 (2)GP前処理型ファジイ推論を用いた評価関数の生成 熟練者の持つ,欠陥形状とECT検査信号との関係に関する知識の獲得を目指し,ファジィ推論への特徴量抽出にGPを適用したファジィ推論機構を構築し、その有効性を示した. (3)データベースを用いたき裂形状の高速推定計算法 パラメータ推定にもとづく、データベースを用いた多重スプラインによるき裂形状の高速推定計算法を提案し、その有効性を検証した。 (4)進化型計算によるき裂のプロファイリング データベースを用いた高速高精度順解析法を援用した進化型計算逆解析計算アルゴリズムを構築し、IGA/SCC等の自然き裂の同定問題に適用し、その有効性を検証した。 (5)超伝導量子干渉素計による遺伝的アルゴリズムをもちいた深さ形状推定 超伝導量子干渉計による磁場計測データを用いて、材料欠陥の深さ方向の幾何学的形状を推定計算するアルゴリズムについて考察し、実験データとの比較により、検査の有効性を示した。 以上、簡略化ファジイ推論(FS)、遺伝的アルゴリズム(GA)、遺伝的プログラミング(GP)、共進化アルゴリズム等の計算知能化技術を電磁場逆解析法と統合化することにより、渦電流探傷法による欠陥信号の高精度化に関して一定の成果が得られた。また高感度磁気センサである超伝導量子干渉素子をもちいた非破壊評価技術にもここで提案した計算法を適用し、その有効性が確認された。ここで提案された、いくつかの計算法は各種ベンチマーク問題で所定の推定精度を獲得しており、これらの成果は、今後渦電流探傷の検査自動化技術の実現に大いに寄与するものと考えられる。
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