研究概要 |
本研究ではICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)を用いる微量金属元素の存在量と存在形態に関する分析法を拡張して、天然水中コロイド及び粒子に含まれる微量金属元素の分離・測定法を開発し、同一水圏環境における存在形態別の微量元素濃度測定を目的とした。 本年度は、以前に開発した限外ろ過濃縮・サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)/UV/ICP-MS法により池水中溶存高分子有機錯体中の微量金属を15元素定量することができた。これまでは定性的な情報を得るのみであったが、あらかじめ含有元素濃度を求めた天然水試料を濃度標準の溶液として用いて、マトリックスと試料中有機物の影響を最小限にすることができた。また、天然水中粒子成分をメンブランフィルターで捕集し、粒径別の粒子態金属濃度分布を求める手法を最適化した。孔径3μm,1μm,0.4μm,0.2μm,0.05μmの各フィルター(孔径が最も均一なヌクレオポアフィルターを使用)で逐次ろ過し、フィルター上に粒子成分を捕集した。ポリカーボネート製のフィルターをアンモニア水で分解した後、HNO_3/HF/HClO_4法で粒子成分を分解した。続いてICP-MSで測定することにより池水中粒子に含まれる40元素の濃度分布を求めることができた。溶存態と定義されている0.45μm以下の成分中にも粒子性の物質が含まれることが確認され、さらに粒径3〜1μmの粒子と粒径0.2〜0.05μmの粒子を比較すると元素組成が異なることがわかった。0.2μm〜0.05μmの粒径を持つ物質中の元素は、クトマトグラフ法で測定された分子量300000以上に相当する高分子有機錯体中元素と類似しており、Fe,Cu,Zn,Pb,軽希土類元素などが相対的に多く含まれた。この物質は、Fe(OH)_3のコロイドに有機錯体が糸巻き状に巻き付き、Cu,Zn,Pbなとの物質がそこに取り込まれた有機コロイド状物質であると予測した。
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