フミシ物質(フミン酸・フルボ酸)は、環境中の主たる有機成分であり、環境中での金属の存在状態に影響を与えると共に、近年は有害な有機物と結合し、その残留や拡散に影響する。また水道の塩素処理における有害なトリハロメタン生成にも関与している。本研究では、酸性雨による土壌からのアルミニウムの溶出に及ぼす土壌中フミン物質の影響について検討した。 酸性雨による森林衰退は世界的な環境問題だが、硝酸や硫酸を含む酸性雨が降ると、土壌はカルシウムやマグネシウムイオンと降雨中の水素イオンを交換して土壌を中和するが、pHが5以下になるとアルミニウムの溶解によっても中和される。アルミニウムは植物の伸長を著しく阻害し、植物被害を引き起こす。アルミニウムの毒性はその化学種に依存し、フミン物質と錯形成していると毒性は比較的低いと推測されている。 本研究では、アルミニウムとルモガリオンの蛍光反応を基にした自動分析法とカチオン及びアニオン交換体を用いるアルミニウムの状態別定量法(スペシエーション)を開発し、土壌中のアルミニウムの化学種を求めた。水溶性のアルミニウムは土壌のpH5以下で溶出し、pHが低いほどその濃度は高くなり、同じpHでもフミン物質の濃度が高いほど高くなる。これはアルミニウムが土壌中のフミン物質と錯体を形成し、溶出するためと考えられる。土壌中フミン物質の分子量は、5000〜数万がほとんどで、河川水中フミン物質よりも高分子量のものが多い。土壌pH5付近では、有機錯体とヒドロキソ錯体が主に存在するが、pH3.5付近ではAl^<3+>が多く存在し、土壌pHが低下するとアルミニウムによる植物への影響が懸念される。
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