研究概要 |
平成12年度は松山平野を対象に、各種土壌中のPCNs濃度レベル、組成を明らかにしPCDDs/DFsの測定結果とも比較検討し土壌汚染の特徴について明らかにした。其の結果、分析した全ての試料からPCNsが検出され、広範囲な土壌汚染様相が明らかとなった。そこで同族体及び異性体組成を手がかりに汚染給源を解明することを試みた。PCNsの残留組成について、山間地・都市土壌タイプと水田土壌タイプの二つに大別された。即ち山間地、都市土壌では5塩素置換体が、水田土壌では4塩素置換体が優占していた。さらに松山平野の河川底質中のPCNs組成についても比較検討したところ、水田土壌の組成とほぼ一致した。PCNsの汚染給源として燃焼生成が考えられるところから、焼却場飛灰中のPCNsと比較したところ、その組成パターンは上述の山間地・都市土壌タイプと水田土壌タイプのいずれのタイプとも異なっていた。一方、PCDDs/DFs濃度との関連を明らかにするために回帰分析を行った。其の結果、山間地土壌のPCNsとPCDDs間に相関関係が見られた(r=0.90,p<0.05)。このことは、山間地においては燃焼過程が汚染給源として寄与しているのに対し、市街地など人的活動の影響が大きい地域では、燃焼過程以外の給源も寄与していることを示唆している。なおPCNs組成について類似性が見られなかったのは、土壌中で一部の同族体・異性体が分解し飛灰中の組成パターンと異なったためと考えられる。毒性的評価に関しては、Giesyらによって提唱されているPCNsの毒性等価換算係数を用いて毒性等量値を求めたところ、PCDDs/DFsに比較して寄与率は数%であり、PCNsの今日の土壌残留濃度はPCDDs/DFsの毒性的なインパクトに比較して低いということが結論づけられた。
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