研究課題/領域番号 |
10680505
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
石田 昭夫 熊本大学, 理学部, 教授 (40040117)
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研究分担者 |
弘田 禮一郎 熊本大学, 名誉教授
松坂 理夫 熊本大学, 理学部, 教授 (40001656)
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キーワード | 有明海 / 大腸菌 / 大腸菌群 / 生残率 / 海洋 / 河川 / 干潟土壌 / 汽水域 |
研究概要 |
大腸菌は腸内細菌であり、河川・海洋等に存在すれば糞便由来として水質汚染の状態を知る衛生学的な指標細菌として知られている。しかしながら、大腸菌が家庭排水から河川へと流出し海洋に至る自然環境で、どの様な適応と生存状態にあるかについては、不明な点が多い。我々は、自然環境として代表的な閉鎖性水域である有明海に流入する白川水系に注目し、その河口域及び海洋の自然環境下での大腸菌の動態を明らかにする目的で、申請年度である平成10年度及び11年度に亘り本研究を遂行しつつある。 平成10年度において、調査ポイントとして、白川水系及び河口汽水域にに5ポイント、さらに有明海全域に亘り26ポイントを設定し、最確法(MPN)を用いて大腸菌群数を調査した。熊本都市圏を貫通する白川調査ポイントでは、調査日時により各ポイント毎に多少の変動はあるものの、いずれも多量の大腸菌群数(MPN=数万)が検出され有明海に流入していることが判明した。白川河口域から有明海沖合まで直線距離約11kmに亘り、海水及び海底土壌を採取し、大腸菌群数を調査した。沖合11kmの海底土壌(深部45cm)には、大腸菌群の存在は検出されないものの、いずれの調査地点においても大腸菌群は少量ながら検出された。このことから、河川中の大腸菌群は、有明海流入域では速やかに海水で希釈されること、一方、有明海全域を網羅する各調査ポイントの表層海水においても大腸菌群が検出されたことから、かなり長期間にわたり海洋で生存していることが示唆された。このことは、実験室レベルでの大腸菌の天然海水中での生残観察(一ケ月以上は安定)からも裏付けられた。 一方、干潟土壌からはほとんど大腸菌群が検出されないことから、干潟土壌にあらかじめ培養した大腸菌を混和させその生残を観察した。興味深いことに、1週間で大腸菌はすみやかに死滅した。今後、大腸菌群の動態に及ぼす干潟土壌の無機的・有機的要因を詳細に探るとともに、干潟土壌の環境浄化作用について研究を展開する予定である。
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