研究概要 |
平成10年度に引き続き、海洋性無セキツイ動物の軟体部に含まれる元素濃度を求めた。分析方法は光量子放射化分析法、中性子放射化分析法および原子吸光光度法の三法を用いた。分析した試料は宮城県雄勝湾で採取されたバカガイ、宮城県山元町近海のホッキガイ、福島県相馬近海のアワビとガザミ、石川県輪島近海のアワビ、広島県能美島のマガキ、三重県鳥羽のイセエビ、鹿児島県奄美諸島のイセエビ、ゾウリエビ、セミエビ、ノコギリガザミ、アサヒガニ、モンガニであった。アワビについては筋肉と中腸腺、エビ、カニ試料については、エラ、筋肉、肝すい腺に分離して分析を行った。これら試料についてAg,As,Br,Ca,Co,Cr,Cu,Fe,K,I,Mg,Mn,Na,Ni,Pb,Rb,Se,Sn,Sr,Znの20元素の分析値を得た。 前年度の結果とあわせることにより、生物種、器官、生息海域に関して元素濃度にいくつかの特徴が明らかになり、それらを以下に示す。 (1)Rb濃度は種、器官、生息海域の差異がほとんどみられず、2-6μg/g(乾燥重量)の範囲にはいる。 (2)アワビ中腸腺にはAg,As,Fe,Mn,Niが濃縮されている。また、Niには生息海域特異性がみられた。 (3)筋肉に含まれる主な元素はCa,K,Mg,Naであり、重金属元素はほとんど検出されない。 (4)エビ、カニ類の肝すい腺、エラにはAgが濃縮されている。 (5)エビ、カニ類の多くはAsを濃縮している。 これらの特徴のうち、アワビ、イセエビのヒ素濃度は摂取する海藻からの濃縮がひとつの経路として考えられる。
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