研究概要 |
1) 水環境中で水生生物にストレスを与える化学物質としてヒ素を対象にオオミジンコを用いて検討した。オオミジンコ(成体)に対するヒ素化合物の48時間後の50%致死濃度は、亜ヒ酸:0.03mM、ヒ酸:0.05mM、メチルアルソン酸(MAA):0.38mM、ジメチルアルシン酸(DMAA):0.01mM、トリメチルアルシンオキシド(TMAO):0.16mMでDMAA以外のメチルヒ素化合物は、ミジンコに対して急性毒性は低かった。無機ヒ素は毒性が高く、またこれまでの動物細胞を用いた毒性試験ではDMAAの毒性も高いことから、本研究においても無機ヒ素が代謝されて生成するDMAAの変異源毒性作用の高いことが示唆された。今後ミジンコ体内におけるヒ素の代謝について検討していく予定である。 2) 淡水生単細胞藻類 Chlamydomonas reinhardtiiのヒ素に対する応答を検討した。C.reinhardtiiは0.01,0.1mMのヒ酸を含む培地で培養したところ、その増殖はコントロールより増加した。しかし、1mMでは増殖が若干阻害されたが、生育には影響なかった。,しかし10,100mMでは全く生育は阻害された。極めて低いヒ素濃度では藻類の増殖が促されたことから、ヒ素は藻類の生育に対して何らかの影響を及ぼすことが明らかとなった。またC.reinhardtiiをヒ素を1mM含む培地で培養したところ、その藻体内にジメチルヒ素化合物が観察されたことから、藻類は無機ヒ素を取り込んでメチル化を行っていることが明らかとなった。この機構を解明するため、ヒ素を多く取り込む変異株の作成を行った。Arg合成酵素欠損株にArg遺伝子をランダムにエレクトロポーレーション法で導入して変異株を作成したところ、ヒ素感受性株は野生株よりおよそ3倍のヒ素を取り込み、さらにより多くのジメチルヒ素化合物を生成していた。この化合物をHPLC-ICP-MSにより測定した結果から、構造未知の化合物であり、クロマトグラフの挙動からアルセノリボースと推定された。またC.reinhardtiiホモジネートから上溝画分を取りだし、無機ヒ素を添加してインキュベートしたところ、GC-MSによりジメチルヒ素雅号物の生成が確認され、ヒ素のメチル化には酵素系が関与していることが示唆された。
|