春季、中国北部の砂漠から巻き上げられた黄砂は、東アジア地域の大気エーロゾルの主要構成要素と考えられている。本年度は、ADEOS/POLDERセンサによって観測された東アジア地域の画像に見られる黄砂の分布を推定した。一般に、衛星画像のみから黄砂の分布を抽出することは難しいため、ADEOS/POLDERデータとトラジェクトリ型長距離輸送シミュレーションを併用することにより衛星画像上での黄砂の空間分布を同定する方法について検討した。 黄砂観測事実: 1997年4月13日、金沢地方気象台において黄砂の目視観測された。また、4月における石川県における浮遊粒子量の測定結果においても12から13日にかけて1日の総浮遊粒子量は他の日に比べて多いことが分かっている。従って、4月12、13日は石川県付近に黄砂が飛来したものと推定される。 POLDERデータからの結果: 1997年4月12、13、14日と日本海を含む東アジア地域を観測したPOLDERレベル1データを基に作成された合成カラー画像(443nm:青、565nm:緑、765nm:赤)の解析から黄砂とみなされる雲が12日から13山とかけて黄海から朝鮮半島南部を横切り山陰沖の日本海に移動し、14日には太平洋に移行していることが推察された。 長距離輸送シミュレーションによる結果: 黄砂の長距離輸送シミュレーションは、ECMWFデータを基にトラジェクトリ計算を行い、その結果を使って拡散・沈降計算を行った。 1997年4月においては、中国北部の低気圧の位置を参考にして、黄砂の発生地点をタクラマカン、バダインジャラン砂漠とし、黄砂輸送経路を4月6日から10日まで1時間間隔で計算した。その結果、高度750hpa(約2.5km)以上で放出された粒子は黄海から朝鮮半島南部を通過し、日本海に達することが分かった。長距離輸送シミュレーションから春季に濃度の高い黄砂の雲が黄海、朝鮮半島南部から日本海かけて分布する時期があることが分かる。これは、ADEOS/POLDER画像に見られる黄海から日本海にかけて分布する黄砂の雲に対応していることが分かった。
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