研究概要 |
1) ポリマーマトリックスの合成について:我々のグループで見い出した水-有機2相系で開始剤にテトラブチルアンモニウムクロライド(TBACl)-Na_2S_2O_4-CCl_4を用いてビニルモノマーの重合を行うと、重合速度は酢酸ビニル>アクリロニトリル>メタクリル酸メチル(MMA)の順に小さくなり、スチレン(St)ではまったく重合しなかった。そこで、MMAの重合について溶媒効果を調べると、酢酸エチルに比べてトルエン、ベンゼンなどの芳香族溶媒ではあまり重合せず、芳香族分子がNa_2S_2O_4-CCl_4の反応を阻害していることが推測された。 2) 色素の合成および高分子色素の合成について:5-mono-(p-hydroxyphenyl)-10,15,20-tri-(p-alkyl-phenyl)porphyrinTP(OH)(R^1)PH_2と略す:R^1=OC_8H_<17>,H))にスペーサとしてメチレン基を3つまたは9つ導入した新規なポルフィリンをTP(OH)(R^1)PH_2とBr-(CH_2)-OHを脱水ジメチルホルムアミド(DMF)中、炭酸カリウム存在下室温で反応させると、目的物質であるポルフイリンが88-90%の収率で得られた。 一方、高分子色素の合成条件として、塩基は弱塩基の炭酸カリウムから強塩基でしかもNa^+に比べてイオン半径の大きいK^+を有するKN(Si(CH_3)_3)を用いて、クロロメチルスチレン(CMSt)-MMA共重合体と脱水DMF中において反応温度を室温から120℃、反応時間も最長で2週間変えて行った。しかし、反応混合物をシリカゲルカラムで分離後、さらに分取ゲルクロマトグラフィーにより微量の未反応のポルフィリンを除くと、高分子色素の収率は約1%以下の低収率であった。これは、脂肪族アルコールの水酸基とクロロメチル基との反応性がフェノールの水酸基に比べて低いためと思われる。しかし、末端に水酸基を持ち長鎖メチレン鎖を有する上述のポルフィリンをエチルセルロース膜に分散した複合膜のHClガスに対する吸光度の変化量は、TP(OH)(H)_3PH_2に比べてかなり減少したがTPPH_2に比べて2倍もあり、低濃度のHClガスに対する検出能力を有し、またベースラインへの回復速度は、TPPH_2とほぼ同じになり、スペーサーを水酸基とフェニル基との間に導入することにより回復速度は改善された。
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