研究概要 |
都市ゴミの焼却炉を最大の発生源とするダイオキシンは、年々地球規模の汚染が広まってきているという報告がなされている。ダイオキシンの毒性は多様であり、免疫機能の低下、催倚性、ウェィスティング症候群、発癌のプロモーションなどであり、我々人類を含めた哺乳動物にとって大きな問題となりつつある。しかしながら、ダイオキシンの生体に対する多様な毒性を説明する作用機構に関してはほとんど明かになっていない。そこで、標的遺伝子をチトクロームP-4501A1の転写活性化を指標として、ダイオキシンが引き起こす細胞内のシグナル伝達系を検討した。 チトクローム P-4501A1のMEKを介した新しい誘導経路として、下記のような機構が考えられる。 (I) MEKの上流にはRaf-1,Ras,などがあり、下流にはERK1/2があって、シグナルを伝達している。そこで、ダイオキシン投与によって各々の因子の活性が上昇するかどうかを調べた。 1) ERK1/2の活性上昇の検出には、basic myelin protein(BMP)を基質としたリン酸基の取り込みによって調べた。ヒトHepG2細胞において、TCDD投与後30分をピークとする一過性のERK1/2の上昇を検出した。また、ERK1/2のリン酸化チロシン特異抗体により、チロシン残基がリン酸化されたERK1/2の量をTCDD投与後30分のポイントで定量すると、ERK2が有意にリン酸化されていることが明かとなった。。 このことは、TCDDの生物毒性として、Ahレセプターを介した毒性以外に、細胞内シグナル伝達系を活性化して細胞内の情報伝達系を乱すことによる、TCDDの毒性発現の機構が存在していることを示唆している。
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