研究概要 |
従来の藻類生長阻害試験の欠点のひとつである迅速性を改良するために,細胞量の変化の代わりに酸素発生量を指標とした酸素発生抑制試験を考案し,その試験条件について検討している。供試藻類には藻類生長阻害試験の標準種として広く用いられている緑藻の一種Selenastrum capricornutumを使用している。これまで,標準的検査培地であるAAP培地を使用したときの試験条件については一部改良の余地はあるものの検討が済んでおり,藻体濃度を20mgSS/Lに設定すれば8時間で従来法と同様の感度で毒性評価が行えることがわかっている。 本研究ではこの毒性試験手法を実環境水のようにAAP培地に比べて栄養レベルの低い検水に適用できるかどうかを確認すると同時に,その際の試験条件について検討することを目的としている。特に本年度は,栄養元素のうち閉鎖水域の富栄養化の指標として重要視されている窒素およびリン濃度を低く設定したときに試験感度,精度にどのような影響が生ずるかに焦点を充てて検討を行った。 その結果,AAP培地の組成成分全体の濃度を比例的に希薄にしていくと,1/10程度の濃度で十分な酸素発生が得られなくなり,その結果,十分な精度を持って毒性評価ができなくなることがわかった。しかし,窒素およびリン濃度をそれぞれ単独で下げた場合には試験感度および精度にはほとんど影響が見られないことがわかった。このことから,試験感度および精度は水質に影響されるが,その要因は窒素やリン以外の成分であることが示された。次年度以降,試験結果に影響を与える因子についてさらに検討を進めていく予定である。
|