原爆の黒い雨の降雨域で生育した広島産のスギおよび比較のため原爆の影響を受けていない山形県で生育したスギ樹幹中の@@S190@@E1Sr、@@S1137@@E1Csを測定した。原爆の影響を受けた長崎産スギ樹幹中の@@S190@@E1Srの測定はすでに終えており、その結果から@@S190@@E1Srが辺材部で移動することを確かめている。 スギ樹幹中でSrがどのように移動拡散するか詳細に調べるため、生育中のスギに塩化ストロンチウム溶液(200mM、500ml)を注入し、PIXE分析法でSrの樹幹中での分布を調べた。注入は胸高部で辺材の中央部にあたる形成層から2cmの深さに注入し、約8月後に伐採した。注入した位置およびその2m、4m上方の部位から薄片を作成し、PIXE分析した。放射化分析法でCaの濃度と分布パターンを測定した。Srは心材、形成層のいずれの方向にも拡散したが大きく移動しなかった。注入部位より2m上方におけるSrの放射方向の分布は、注入部位における分布とよく似ていた。この結果からSrが上方へ容易に移動することがわかった。 Caの放射方向の濃度分布をみると、Sr濃度の高い部位でCaが減少している。これは樹幹内で栄養元素で大量に存在するCaがSrで置きかわったものと考えられる。 スギ樹幹中の@@S1137@@E1Cs分布はK元素の分布とよく似た結果となった。これはCsがアルカリ金属元素で化学的性質が似たKと同じような分布をしており同位体希釈で心材部でも容易に移動した考えられる。 現在樹幹中の重金属元素をPIXE分析法およびICP-MS分析法で測定しており樹木の環境指標としての有効性を検討中である。
|