研究課題/領域番号 |
10680514
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田口 貞善 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 教授 (90086819)
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研究分担者 |
野原 隆司 京都大学, 大学院医学研究科, 講師 (80180769)
森谷 敏夫 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 助教授 (90175638)
津田 謹輔 京都大学, 総合人間学部, 教授 (10180001)
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キーワード | 重粒子線照射 / 脳卒中易発症ラット / 骨格筋酵素活性 / 骨代謝 |
研究概要 |
本研究では、重粒子加速器(HIMAC)を用いて、月齢の異なるWistar系ラット及び同系の脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)に重粒子線を照射し、重粒子線への急性曝露と加齢、循環器系疾患が骨格筋線維の組織化学的特性及び骨代謝に与える影響を検討した。本実験では、若齢(3ヶ月齢)のWistar系ラット及びSHRSPラットと老齢(18ヶ月齢)のWistar系ラットを用いて重粒子線を全身照射し、照射後3ヶ月時点に麻酔下で骨格筋を採取し、その組織化学的特性及び骨強度について観察した。照射量は、0、1.25、2.5Gyの3種類とした。ヒラメ筋の筋線維タイブ別組成比率においては、若齢のWistar系とSHRSPとも照射量の違いによる差異は認められなかった。しかしながら、老齢のWistar系ラットの1.25Gy照射群では、その対照群と比較してFOG線維において30.7%の増加を認めた。我々は、重粒子線を3ヶ月齢ラットの後肢のみに照射した場合においても、ヒラメ筋の筋線維組成比率に変化が見られなかったことを報告しており、老齢期では、重粒子線照射が筋線維タイプの決定に関わるミオシン重鎖アイソフォームの発現に影響を及ぼすことを示唆した。単一筋線維の筋横断面積については、若齢のWistar系では、各照射量による差は認められなかったが、SHRSPでは対照群と比較して1.25Gy、2.5Gyとも各筋線維タイプで高い値を示した。また老齢のWistar系ラットでは、1.25Gy照射群のSO線維においてのみ有意差が観察され、対照群と比較して15.8%の低値を示した。若齢、老齢とも照射群のヒラメ筋SO線維において、酸化系酵素活性であるSDH活性は、対照群と比較して同水準を保っており、予想された活性の低下は観察されなかった。一方、解糖系酵素活性であるα-GPD活性は、若齢Wistar系2.5Gy照射群のSO線維、FOG線維において対照群と比較して有意な低下がみられるが、SHRSP2.5Gy照射群のSO線維では、逆に対照群と比較して有意に高い値が示された。重粒子線照射がヒラメ筋の酸化系代謝能に及ぼす影響は小さいが、解糖系代謝能については、若齢のWistar系とSHRSPラットと異なる反応を示し、重粒子線の影響受ける可能性が示唆された。大腿骨の骨強度は、各群間に差は認められず、重粒子線が骨代謝に与える影響がWistar系とSHRSPラットにおいて小さいことが認めらた。
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