研究課題/領域番号 |
10680521
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
森 展子 大阪府立大学, 先端科学研究所, 助手 (90100221)
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研究分担者 |
奥本 正昭 大阪府立大学, 先端科学研究所, 教授 (50100186)
山手 丈至 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (50150115)
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キーワード | 放射線 / 胸腺 / アポトーシス / 感受性 / 遺伝子 / マウス |
研究概要 |
本年度は、DNA二重鎖切断修復に関係するDNA-PKのホロ酵素であるDNA-PKcsがアポトーシス感受性遺伝子Rapop1の候補遺伝子であるかどうか、検討した。これまでの研究で、DNA-PKcsをコードする遺伝子PrkdcがRapop1の最小0.45cM領域にはいることがわかっていた。BALB/cとSTSより得たPrkdcのcDNAの全塩基配列を読んで比較したところ、二箇所にアミノ酸置換をもたらす違いがあった、一つは想定上のロイシンジッパー配列より3側にあり、もう一つはPI3キナーゼ配列の近傍にあった。多くの近交系マウスについてこれら二箇所のハプロタイプを調べたところ、C57BL/6J、B10、C3Hを含む大多数がSTSタイプ、BALB/cタイプはBALB/c亜系統とSCIDマウスのバックグラウンドであるC.B17、129/SvJであった。これから、STS型が野生型、BALB/c型は変異型であると推定された。野生型は、DNA-PK活性が変異型の5-10倍高かった。mRNAの発現レベルに差はなかったが、DNA-PKcs蛋白の発現は、変異型では著しく低かった。以上から、DNA-PKcsの変異型では、おそらく蛋白が不安定性になり発現量が低下して活性の低下がもたらされていると推測された。BALB/cの遺伝的バックグラウンドにSTSの遺伝子型のDNA-PKcsをもつRapop1コンジェニックマウスを129/SvJまたはC.B17と交配し、遺伝的に同一のバックグラウンドのもとで、アポトーシス感受性とDNA-PKcsの遺伝子型との連鎖が再現された。また、Rapop1コンジェニックマウスはBALB/cより低い放射線リンパ腫感受性を示した。以上から、DNA-PKcsの変異型に起因する酵素活性の低さが、二重鎖切断の修復力の不足による細胞死をもたらし、また、おそらくは誤修復によって放射線リンパ腫感受性を高めているのではないかと結論した。これらの結果は、2000年の日本放射線影響学会、日本癌学会、日本分子生物学会において発表し、現在、論文を投稿中である(アクセプタブルの返事を受け取っている)。
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