フラクタル次元を変化させて音の複雑さと音色の関係を調べた聴覚心理実験の結果から、フフクタル次元が高くなるほど「複雑さを増し」そして暗色の特徴が少なくなる」とい2傾向を示し、フラクタル次元は聴覚心理の重要なパラメータであることがわかった。生活環境に依在する騒音のフラクタル次元は1.4以下の音がほとんどであり、フラクタル性を有する音波が多いことが分る。生活している音環境の保全には騒音レベルの評価と同時に、騒音の音質も加味した環境基準が必要である。 今期の研究成果は「自己相似性を用いた交通騒音圧縮に関する研究と地域環境の音の構造化の評価法」と「音波到来方向の同定法」にある。圧縮・構造化に関する研究は過去3年の成果をまとめ、騒音制御学会の国際会議であるInterNoise2001で報告した。 音波到来方向の同定法は新しい成果であるが、音環境を調査する中で、地域の暗騒音を形成している音源が同定でき場合が多いことに気がつく。また、気になる音についての聞き取り調査の中では、常に存在している音を指摘する人が多いが、その発生位置があいまいであることも多い。騒音源の発生箇所を探査することの重要性を知った。マイクロホンアレーを製作し、MUSIC法を用いた音波到来方向の同定を行うことにした。プログフムの製作、シミュレーション実験を行い、信号対雑音比(SNR)が-10dBの低SNRの環境状態0.5度以内で音源位置を推定できることを確かめた。 交通騒音のように移動音源の同定問題についても行ったが、時速65km/hで移動する音源の角度推定も5度以内で推定可能である。伝送系が常に変化している場合には、音波の発生機構は複雑になる。これらの手法を用いることにより、地域の音環境を形成している音源が明白になり、環境保全に対して寄与できると考えられる。
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