水棲生物のミジンコを用いて、環境毒性物質の影響を高感度で効率的にモニタリングするための新規な手法を開発する目的で、DNA損傷性を指標にした評価法の基礎データを取った。DNA損傷性を高感度で検出するために、染色体のDNA鎖切断を電気泳動のパターンで検出するコメットアッセイ法の適用を検討した。 ミジンコの成体は殻で覆われているので、ホモジナイズによって個々の細胞を単離することは困難と予想されたため、単為生殖卵を成体から分離して集めたものをホモジナイズして材料とした。細胞の分離はうまくいったが、無処理対照の細胞核でもDNA鎖切断によるコメット像が多数観察された。これは、材料とした卵の発生過程が初期のものから孵化直前のものまで種々のものが混じっているため、核の調製操作において物理的な力に比較的弱い染色体構造を持つ卵が存在することが一因と考えられた。 特定の発生ステージにある卵だけを採取するのはモニタリングを考えた場合に実際的ではないため、再度成体から細胞を単離する方法を検討した。ホモジナイズによって生じる殻の破片を取り除くために、スクロース密度勾配による遠心を取り入れることで良好な成績が得られた。得られた核分画を用いてコメットを観察した結果、対照では正常のものがほとんどであった。この方法を用いて次年度では各種変異原処理したミジンコについてデータを集積する予定である。
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