本研究は、環境水中に残留するクロラミンについて魚類の卵、仔魚および成魚に対する急性毒性、そして成長や生殖などへの影響を検討することを目的としている。本年度はゼブラフィッシュの卵や仔魚を用いて、脂溶性や安定性の異なる数種のクロラミンと次亜塩素酸(HOCl)について急性毒性による影響(ふ化率および半数致死濃度)を検討した。 ゼブラフィッシュの卵は、産卵後6から8時間のもの、仔魚は、ふ化後3から6日経たもの(産卵後7から10日)を用いた。クロラミンは、水溶液中で塩化アンモニウム、エタノールアミン、およびクレアチニンをそれぞれ次亜塩素酸(HOCl)と反応させて調製した。これらのクロラミンおよびHOClを、1Lあたり60mgの塩類(人工海水用調製塩)を含む水で希釈して曝露実験水(pH6.5〜7.5)とした。また、水中の残留塩素量はDPD法で測定した。卵および仔魚は20個もしくは20尾を1群として26℃で3時間曝露し、その後塩素を含まない実験水に移し観察を行った。卵は白濁を致死の指標とした。卵での3時間曝露によるEC50値は、HOCl、アンモニアクロラミン(I)、エタノールアミンクロラミン(II)およびクレアチニンクロラミン(III)で、それぞれ6.34、3.85、4.04および2.07mg/Lであったが、清浄な実験水に移した後にも白濁化が進み24時間後のEC50値はそれぞれ2.85、2.72、2.90および1.61mg/Lに減少した。HOClではEC50値付近の濃度でふ化時間の延長が観察された。仔魚に対する毒性は、HOClと(I)ではそれぞれ<0.3および0.66mg/Lであり卵に比べて高い感受性をしめしたが、(III)では2.00mg/Lであり、卵と変わらなかった。 来年度は引き続きこれらクロラミンについて、成魚での急性毒性と生殖や成長への影響について検討を行う。
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