研究概要 |
本研究は、環境水中に残留する種々のクロラミンによる生態への影響を検討することを目的とし、魚類の卵、仔魚および成魚を用いてクロラミンの急性毒性を検討し、また培養細胞を用いて細胞障害性の検討を行った。 1ゼブラフィッシュの卵、仔魚および成魚でのクロラミンおよび次亜塩素酸の急性毒性 脂溶性、安定性が異なる三種類のクロラミン(アンモニアモノクロラミン(I)、エタノールアミンモノクロラミン(II)およびクレアチニンモノクロラミン(III))を調製し、次亜塩素酸(HOCl)とともに急性毒性試験を行った。卵での白濁を指標とした3時間曝露によるEC50値は(I),(II),(III)およびHOClで、有効塩素濃度としてそれぞれ3.85、4.04、2.07および6.34mg/Lであったが、清浄な水に移した後にも白濁化は進み24時間後のEC50値は約50%減少した。HOClではEC50値付近の曝露でふ化時間の延長が観察された。仔魚でのEC50値は、HOClと(I)ではそれぞれ<0.20および0.66mg/Lであり卵に比べて高い感受性を示したが、(III)では卵と変わらない値であった。成魚では仔魚に比べて各塩素剤に対する抵抗性の増加が観察された。 2クロラミンによる培養細胞(BALB/3T3)のコロニー形成阻害 クロラミン(I)、(III)およびHOClについて濃度と曝露時間を変えて実験を行った。曝露は細胞培養液をHanks溶液に変えてから行い、塩素消費や結合塩素生成の少ない条件で行った。中でも(I)の細胞毒性が非常に強く(I)では0.36mg/L、2分の曝露によっておよそ50%コロニー形成阻害が観察された。(III)では4.2mg/L、7分であった。HOClでは1.42mg/Lでも5分を超える曝露を必要とし、これは細胞成分との副反応による影響を受けるためと考えられる 以上の結果は環境中に放出される残留塩素を含む水の生態影響評価に基礎的な知見を与えるものと考える。
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