研究概要 |
前年度、3濃度のディーゼル排気(DE:0.3mg/m^3,1mg/m^3,3mg/m^3)をマウスに8カ月間(約34週)暴露するのと併用して卵白アルブミン(OA)をチャレンジした結果、抗原誘発性気道傷害(気管支上皮の粘液細胞化、気管支粘膜下の好酸球、リンパ球の浸潤)が増強され、その強さは3mg/m^3で最も高かったことを見い出した。本年は更にDE暴露期間とOA投与を更に延長して、気管支上皮の病理形態学的な変化、気道過敏性を調べ、肺組織中のサイトカイン類の誘導との関連性を調べた。暴露濃度は前年度と同じ3濃度として10ヶ月間暴露した。暴露16週目に抗原として卵白アルブミン(OA)の10μgを1回腹腔内投与後、1%OAをネブライザーを用いて3週間間隔で8回マウスにチャレンジした。その結果、気道粘膜下への好酸球浸潤を伴う気管支上皮細胞の粘液細胞化が3mg/m^3DE暴露で増強され、またこの病態に伴い気道過敏性が増加することを見いだした。この時、肺組織中のIL5,GM-CSF等のサイトカイン類の誘導が認められた。一方、血中のIgE抗体価は低かったがIgG1は全ての暴露群で非常に高い抗体価を示した。これらの結果から、OAとの併用暴露による喘息様病態の発症にはやはりIgE抗体よりもIgG1抗体が重要であり、気管支上皮の傷害は暴露により高められたIL-5,GM-CSF等による好酸球誘導が強く関与しているものであることが示唆された。以上のように、比較的高濃度のディーゼル(3mg/m^3DE)暴露の場合において、抗原誘発性の喘息用病態が増強されることが明らかになった。
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