研究概要 |
これまで、ディーゼル排気微粒子(DEP)をアレルゲンと共にマウスに気管内投与すると喘息様病態が増強し、その病態は血中IgE抗体価とではなく、IgG1抗体価と有意な相関性がることを見いだした。本研究では、実際にディーゼル排気ガスをマウスに吸入暴露した場合でも気管内投与と同じように喘息様病態が増強されるか否か、また、どの吸入濃度で抗原誘発性の喘息様病態が発現するものかについての量-反応関係の解析を行った。ディーゼル(DE)暴露は0.3mg/m^3,1mg/m^3,3mg/m^3の3濃度として、8ヶ月、10ヶ月間暴露した。暴露16週目に抗原として卵白アルブミン(OA)の10μgを1回腹腔内投与後、1%OAをネブライザーを用いて3週間間隔でマウスにチャレンジした。 その結果、DE+アレルゲンとの8ヶ月間併用暴露では気管内投与の場合と同様、抗原誘発性気道傷害(気管支上皮の粘液細胞化、気管支粘膜下の好酸球、リンパ球の浸潤)が増強され、その強さは3mg/m^3で最も高かった。また、この併用暴露は、DE単独暴露で通常認める気管支上皮細胞の肥大化や無線毛上皮の増殖等の気道上皮の変化を増強させた。また、10ヶ月間の併用暴露では8ヶ月間暴露と同様の気道傷害増強作用が見られ、気道過敏性も亢進していた。更に肺組織のサイトカインIL-5,GM-CSFの誘導が認められた。このとき血中のIgE抗体価は低かったが、IgG1は全ての暴露群で非常に高い抗体価を示した。これらの結果から、併用暴露による喘息様病態の発症にはやはりIgE抗体よりもIgG1抗体が重要であり、気管支上皮の傷害は暴露により高められたIL-5,GM-CSEによる好酸球誘導が強く関与しているものであることが示唆された。また、この研究から比較的高濃度のディーゼル(3mg/m^3DE)暴露の場合において、抗原誘発性の喘息用病態が増強されることが明らかになった。
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