接合藻ミカヅキモ(Closterium ehrenbergii)のクローン培養株から細胞を集め、粗酵素を抽出し、アクリルアミドゲル電気泳動と活性染色法により15酵素のアロザイム変異の検出を試みた。これらのうちホスホグルコムターゼ(PGM)、ホスホグルコースイソメラーゼ(PGI)、6ホスホグルコン酸脱水素酵素(6PGD)、NADP依存イソクエン酸脱水素酵素(IDH)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AAT)の5酵素について判別可能なバンドが得られた。半数体生物であるミカヅキモでは、何量体の酵素であれ1遺伝子座につき1本のバンドしか現れないはずだが、2本ないしそれ以上のバンドが現れ、今後遺伝解析や遺伝子重複の解析を行う必要が認められた。遺伝解析を行っていないためパターン認識によってどの程度の変異があるかを調べた。ミカヅキモコンプレックス(互いに近縁な交配群のまとまり)には現在11の交配群があるが、PGM.PGI.6PGDには交配群内の変異が認められ、IDHとAATには主として交配群間の変異がみられた。 田植え直後の水田や放棄水田、放棄イ草田などから採集した20集団から、各集団につき20から100個体を分離しクローン培養を確立した。これらの集団のうち交配型プラスとマイナスの比が1対1に分離した9集団についてPGMとPGIの変異を比較した。田植え直後の水田から採取した集団はどちらの酵素についても単型的であったが、放棄水田や放棄イ草田から採取した集団はPGMだけか両方の酵素について多型的であった。この結果はアロザイムのような適応中立形質の変異の多様さと除草剤耐性のような適応形質の変異の程度との関連を示唆したため、今後は、より多くの遺伝子座の変異を検出する方法を見つけるとともに、アロザイム変異の多様さと除草剤耐性のような適応形質の変異の程度の関係を調べる必要があることがわかった。
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